社用PCとモニター、モバイルルーター、ヘッドセットなどの周辺機器を、どこまで1台ずつ管理するか。人に渡すか、社外へ持ち出すかで線を引く考え方と、入社から退職までの記録、退職時の返却確認、予備機の台数、IT資産管理ソフトとの分担をまとめました。
退職する社員の最終出社日に、ノートPCは返ってきた。ところがACアダプタとモバイルルーターについては、本人も持っているかどうか覚えていない。入社時に渡したものの記録が、PCの管理番号の1行しか無かったためです。PC本体は台帳に載っていても、一緒に渡した周辺機器はどこにも書かれていない。そのことに気づくのは、たいてい返却の日です。
とはいえ、周辺機器をすべて1台ずつ管理する必要はありません。人に紐づけて渡すものと、社外へ持ち出すものだけを個体で追い、残りは台数で足ります。逆に、このどちらかに当てはまる機器は、数千円のものでも番号を付けて追うべきだと私たちは考えています。社員が30〜300人ほどの会社で総務と情シスを兼ねていると、PCの手配から退職者の機器の回収までを1人で抱えることになり、すべてを1台ずつ追う余裕はまずありません。
社用PCのほかに、総務と情シスを兼ねる担当者が社員に渡しているものを書き出すと、次のようになります。
このうちPC本体は、取得価額によっては固定資産として経理の台帳に載り、資産番号が付きます。モニターやキーボードは事情が違います。法人税では、取得価額が10万円未満の減価償却資産は、事業に使い始めた年度に全額を損金経理すれば、その年度の損金にできます。20万円未満なら、3年で均等に償却する一括償却資産を選ぶこともできます(国税庁 タックスアンサー No.5403)。周辺機器の多くはこの範囲に収まり、費用として処理されれば経理の台帳には1行も残りません。
IT資産管理ソフトも、PCに入れたエージェントから情報を集める仕組みが一般的なので、自宅に置いたままのモニターや予備の棚にあるヘッドセットは対象に入りにくい。2万円のモニターがどの社員の自宅にあるかを記録できるのは、渡した担当者だけということになります。
台帳に持たせる項目と、消耗品との線引きの基本は別の記事にまとめています。備品管理とは?目的・台帳項目・やり方線を引く基準は値段ではなく、2つの問いです。その機器を特定の人に渡すか。社外に持ち出すか。どちらかに当てはまれば、1台ずつ番号を付けて追います。どちらにも当てはまらなければ、何台あるかが分かれば十分です。
値段で線を引くと、1万円台のモバイルルーターが台数管理の側に入ってしまいます。ルーターは1台ごとに回線の契約が結び付いていて、なくせば回線を止める手続きが要ります。どの1台をいつ誰に渡したかが分からなければ、止めるべき回線も決められません。反対に、会議室に据え置いたモニターは5万円でも、その部屋にあるべき台数がそろっていれば誰も困りません。
| 機器 | 管理の単位 | 理由 |
|---|---|---|
| ノートPC、デスクトップPC | 個体 | 人に渡す。経理の資産番号やIT資産管理ソフトの端末情報と突き合わせる |
| 社用スマートフォン | 個体 | 人に渡し、社外へ持ち出す。電話番号と端末が1対1で結び付く |
| モバイルルーター | 個体 | 社外へ持ち出す。なくしたときに止める回線を特定する必要がある |
| 在宅勤務用に持ち帰るモニター、ドッキングステーション | 個体 | 社外にある間は、誰の自宅にあるかが唯一の所在の手がかりになる |
| 席や会議室に据え置くモニター | 台数(場所ごと) | 持ち出さない。場所ごとの台数を数える |
| ヘッドセット | 台数 | 耳に当てる機器なので、渡したら返却を求めない運用にするなら、渡した数と残りの数だけでよい |
| Webカメラ | 原則は台数 | 個人に配って返却を求めないなら台数。会議室用や貸出用の共用品は個体 |
| キーボード、マウス | 台数 | 単価が低く、壊れたら交換で済む。数が減ったら補充する |
| ACアダプタ、変換アダプタ、ケーブル | PCの付属品として記録 | 単体では追わず、PC本体の備考に内訳を書いて、返却時にそろっているかを見る |
表に無い機器で迷ったら、1台見当たらなくなったときに誰かに問い合わせるかどうかで決めてください。キーボードが1台減っても誰にも聞かないなら台数のままにします。聞くのであれば、聞く相手を台帳から引けるように個体で記録します。
台数で管理するものは、置き場所ごとの台数を書いた1枚の表で回ります。補充の目安になる台数を決めておき、それを下回ったら発注する。在庫と同じ考え方です。
備品台帳の基本の項目(管理番号、品名、型番、保管場所、状態)に加えて、人に渡す機器には次の項目を持たせておくと、返却と再貸与のときに迷いません。
状態の区分には、返却済みと予備のあいだに初期化待ちを置くことを勧めます。返ってきたPCをすぐ予備に戻すと、前の持ち主のデータが残ったままの1台が予備の棚に並び、急いでいる日にそのまま次の人へ渡ってしまいます。初期化を終えて日付を書いた時点で予備に移す、という順番を状態の区分で強制しておくわけです。
個体で追う機器は、1人の社員の在籍期間をなぞるように動きます。記録を付けるのは、機器が人の手に渡るときと、人の手を離れるときです。
OSやアプリの設定(キッティング)を済ませたPCは、入社日までは予備機の棚にあるものとして扱います。入社日に渡した時点で、PCとドッキングステーション、ルーターなど、個体で追う機器をまとめてその人に付け替えます。ACアダプタのような付属品は、PC本体の記録の備考に内訳を書いておけば返却のときに照合できます。
受け取りのサインまで取るかは会社によって違いますが、何を渡したかの一覧を本人に見せる手順だけは入れておくべきです。退職時に受け取っていないという話になったとき、拠り所になるのはその一覧しかありません。
入社日には、機器と一緒に、壊れたときの連絡先と、貸与したモニターを私物のPCにつないでよいかといった使い方の決まりも伝えます。口頭で伝えた決まりは残らないので、渡した機器の一覧と同じ紙かメールに書いておくと、あとで確かめる先が1つにまとまります。
故障でPCを入れ替えるときは、代替機を渡す記録と、壊れたPCを修理中にする記録を同じ日に付けます。片方だけだと、台帳の上ではその人が2台持っているか、1台も持っていないかのどちらかになります。修理から戻ったPCを本人に戻すのか予備機に回すのかも、その場で決めて書いておきます。
異動では機器が戻ってこないことのほうが普通で、部署が変わっても同じPCを使い続けます。返却の記録は要りませんが、部署や保管場所の欄を書き換え忘れると、次の棚卸しで所在が合わなくなります。異動先で機種を替える場合だけ、返却と貸与を同じ日に記録します。
在宅勤務の機器も出張の機器も社外に出ますが、記録の仕方は分けたほうが運用は楽です。分かれ目は、返ってくる予定があるかどうかです。
モニター、ドッキングステーション、Webカメラなど。在宅勤務が続くあいだは戻ってこない
モバイルルーター、貸出用のノートPC、プレゼン用の変換アダプタなど。数日で戻ってくる
在宅勤務の機器に返却期限を付けると、期限が来るたびに延長の手間が生まれます。そのうち誰も延長しなくなり、期限切れの貸出が並ぶだけの一覧ができあがる。期限を付けるのは戻ってくる予定のあるものに限ったほうが、期限切れの表示を見たときに本当に動くべき案件だと判断できます。
自宅に置いた機器は担当者が見に行けないので、年に1回、本人に申告してもらうのが現実的です。管理番号のラベルが写った写真を1枚送ってもらえば、番号の読み違いも防げます。
社外で機器をなくしたときの連絡先と手順も、貸し出す時点で本人に渡しておきます。モバイルルーターや社用スマートフォンは、回線を止める連絡が早いほど不正に使われる時間が短くなります。夜間や休日に誰へ連絡するかが決まっていないと、本人は翌朝の出社まで待ってしまいます。
出張用のルーターは、台数が少ないと取り合いになります。来週の出張に持っていきたいという相談が月に何度も来るようなら、手書きの貸出簿や表のままでは重なりを防げないので、日付で押さえる予約の仕組みに移す時期です。
返却の確認は、最終出社日ではなく、退職が決まった連絡を受けた日に始めます。最終出社日に見つけた不足は、もう取り戻す時間がありません。有給休暇の消化に入れば、最終出社日より前に本人が出社しなくなることもあります。
連絡を受けた日にやるのは、その人に渡している機器の一覧を出すことです。台帳を人の名前で絞り込めるなら数分で終わります。絞り込めない台帳だと全行を目で追うことになり、1時間かかることもあります。
4番目を飛ばして、本体を受け取った時点で返却済みにすると、ACアダプタが無いことに気づくのは次の人に渡す日です。そのとき前の持ち主はもう社外にいます。
社内のアカウントを止める作業と機器を回収する作業を別々の担当者がしている場合は、退職の連絡を両方へ同時に流す経路を決めておいてください。アカウントだけ先に止まると、会社のメールで本人に連絡できなくなり、回収の段取りが組みにくくなります。
それでも返ってこない機器が出たときに、弁償を求めるのか、紛失として処理するのかは、貸与の規程や就業規則で決めておく事柄です。担当者がその場で判断することではありません。規程に定めが無いなら、その1件を機に定めを作っておくと、次の退職者のときに迷わずに済みます。
貸与や返却の扱いを、規程としてどこまで書くかは、別の記事で項目ごとに整理しています。備品管理のルールの作り方を読む表計算の台帳で、人の名前での絞り込みや変更の履歴が追いつかなくなってきたら、移行の判断基準と手順を参考にしてください。エクセルから専用システムへ移行する判断基準予備機が1台も無ければ、PCが壊れた日にその社員の仕事は止まり、入社の前日にキッティングが間に合わないことも起きます。余らせすぎるのも問題で、棚で数年眠った機種は、出番が来たころにはOSのサポート期限が近づいています。
台数の目安は、直近1年で故障、紛失、入社によって新たに必要になった台数を月あたりに直し、発注してから渡せる状態になるまでの月数を掛けて出します。1年で18台必要になり、発注からキッティングを終えるまで1か月半かかるなら、18 ÷ 12 × 1.5 で2〜3台です。おおざっぱな計算ですが、勘で決めるよりは外れが小さくなります。入社が4月に集中する会社は、この台数とは別に、入社予定の人数分を3月までにそろえておきます。
予備機も台帳に載せ、状態で予備と分かるようにしておきます。予備の棚から持ち出して誰かに渡したのに台帳が予備のままだと、次に予備を探した人が空の棚の前に立つことになります。修理に出している機器は予備の数に入れず、戻ってきた日に状態を戻す。この2つを交換の手順に含めておくと、台帳の予備の数と棚の中身が合ったまま保てます。
古くなった予備機を処分するときは、台帳の行を消さずに廃棄済みにして、処分した日と、データの消去を誰がどの方法で行ったかを残します。消去を業者に頼んだなら、業者が出す証明書の番号も書いておく。数年後に、あのPCのデータはどうしたのかと聞かれたとき、答えられるのはこの1行だけです。
IT資産管理ソフトは、製品によって範囲は違いますが、PCに入れたエージェントからOSのバージョン、インストールされたソフトウェア、ライセンスの数、更新の適用状況といった端末の中身を集めるものです。MDMは、スマートフォンやPCに設定を遠隔で配り、なくしたときに画面をロックしたりデータを消したりする仕組みです。どちらも、端末に電源が入っていてネットワークにつながっていることが前提になります。
棚に置いた予備機、修理業者に預けているPC、退職者の自宅に残ったモニター、箱に入ったままのモバイルルーターは、エージェントから情報が届かないか、そもそもエージェントが入っていません。物としてどこにあり、誰が持っていて、いつ返ってくるかは、別の記録で持つことになります。
2つを1つの道具で済ませようとするより、管理番号を共通のキーにして2つの記録を並べるほうが無理がありません。PCの管理番号をホスト名にも使っておけば、ソフトの側で見つけた更新の止まった端末が、物としてどこにあるかを台帳から引けます。逆に、台帳で行方の分からなくなった1台が最後にいつネットワークにつながったかは、ソフトの側で調べられます。
並べるときは、同じ項目を両方に手で入れないことです。持ち主と所在は台帳を正とし、OSやソフトウェア、最後にネットワークにつながった日時はソフトの側を正とする。項目ごとにどちらが正かを決めておかないと、2つの記録の持ち主の欄が食い違ったとき、どちらを直せばいいのか誰にも分からなくなります。
社員30人ほどなら、IT資産管理ソフトを入れずに台帳と年1回の棚卸しで回している会社もあるでしょう。300人に近づくと、ライセンスやセキュリティ更新を手作業で追うのは無理が出てきます。どちらの規模でも、周辺機器の所在を台帳の側で持つことは変わりません。
台帳と現物を突き合わせる棚卸しは、対象を分けて少しずつ進めれば、年1回の大仕事にせずに済みます。備品の棚卸しを効率化する5つの方法周辺機器を個体で追うかどうかは、値段ではなく、人に渡すか、社外へ持ち出すかで決めます。キーボードやマウスは台数で管理し、モバイルルーターや在宅勤務用のモニターは1台ずつ追います。
貸与の記録は、渡すとき、修理で入れ替えるとき、返ってきたときに付けます。退職時の確認は、連絡を受けた日にその人の機器を書き出すところから始め、付属品がそろっているのを見てから返却済みにする。PCの中身はIT資産管理ソフトに任せ、物の所在は台帳で持つ。このくらいに分けておけば、兼任の担当者1人でも回せる量に収まります。
Werp™ は、備品を1台ずつ登録し、所在と貸出・返却を記録するクラウドの備品管理サービスです。機器ごとに印刷したQRラベルをスマートフォンで読むと、その1台のページが開き、貸出と返却をボタンで記録できます。1台ごとに保管場所、オーナー、資産番号、取得価格を持たせられ、保管場所やオーナーを変えると、変更前と変更後が履歴に残ります。
出張の貸し出しは、期間を指定した予約から貸し出しておくと、返却期限の24時間前と期限を過ぎたときに、借りた人へメールが届きます。貸出中の機器と借りている人はホーム画面の一覧で確かめられ、管理者はオーナーの列を含む個体一覧をCSVで書き出せます。
Werp™ が扱うのは物としての所在と貸出・返却で、PCの中のソフトウェアやOSの更新状況は読み取りません。また、貸出の相手やオーナーに選べるのはワークスペースのメンバーで、有料プランの料金はメンバーの人数で決まります。全社員に配るPCを1人ずつ紐づけると、全社員分のメンバーが要ります。